遺骨をめぐる妻と親の争い

配偶者が比較的若くして亡くなった場合、もしくは、結婚して間もなく亡くなった場合など、夫婦関係と親子関係の「濃さ」に甲乙つけがたいとき、配偶者の遺骨をその両親と取り合うような事態に発展することがあります。

特に、残された一方と配偶者の両親との関係が良好でない場合などは、その問題が顕著になります。

今回は、遺骨をめぐる争いを題材に、祭祀承継についてお伝えしたいと思います。

夫の早すぎる死がもたらした争い

夫:癌のため45歳で死亡
妻:40歳
夫の両親:共に健在

夫婦は、10年あまりの長い交際期間を経て、ようやく婚姻に至った。10年もの月日がかかったのは、夫の両親が「家柄が違う」と結婚に反対していたからであるが、両親も孫の顔見たさに渋々結婚に了承。

しかし、結婚から1年あまりで夫の肺に癌が見つかり、発見から半年で帰らぬ人となってしまった。

ようやく一緒になれたと思った矢先の夫の死亡に妻は打ちひしがれ、また、子どもに先立たれた夫の両親の悲しみも深かった。

無事に葬儀を執り行ったが、墓問題で紛糾することに。

両親としては、息子を先祖代々のお墓に入れてやりたいと思ったが、妻がそれに猛反対したのである。

妻としては、愛しい夫に身近な場所にいてほしい気持ちが強く、遠く離れた夫の両親の郷里に埋骨されるなんて耐えがたかった。

そんな妻が勝手に自宅近くにお墓を購入し、遺骨を納骨しようとしたので、夫の両親は家庭裁判所で争うことにした。夫の両親が申し立てたのは、「祭祀承継者の指定」という申し立てだった。

祭祀承継者とは・・・
祭祀承継者とは、系譜、祭具及び墳墓等の祭祀財産を承継する者をいいます(民法897条)。「系譜」とは、歴代の家長を中心に祖先伝来の家計を表示するもの、「祭具」とは、祖先の祭祀や礼拝の用に供されるもので、仏壇・神棚・位牌・霊位・十字架などをいいます。
「墳墓」は、墓石・墓碑などの墓標や土倉の場合の埋棺などをいいます。なお、墓地の所有権や墓地の使用権も、祭祀財産に含まれるものと考えられ、遺骨についても、祭祀主宰者に帰属するというのが判例です。

遺骨はだれのもの

遺体や遺骨については、墓と同様に祭祀主宰者に原始的に帰属します(最判平成元年7月18日判決)。そのため、遺骨の引き渡しを受けたいときは、自分が祭祀承継者にふさわしいことを主張し、家庭裁判所で指定を受け、引き渡しをうけることになります。

この事例では、先祖代々の祭祀承継者という点では、亡父の父が指定されそうですが、一年という短期間の婚姻関係とはいえ、妻が配偶者であったことに変わりはなく、妻にも有利な面がありそうです。

この事例では、祭祀承継というより、遺骨の引き渡しが争いになっているため、分骨という和解の方法もありますが、双方が同意しない限り合意は難しそうです。

問題が長引いた挙句・・・

相続に関する調停や裁判は、とにかく長引く傾向にあります。そのため、一周忌の法要の際にも、まだお墓ができていない、納骨もできていないということにもなりかねません。

このような事態は、残された人たちにとってもつらい時間になりますし、先立った者にとっても残念無念なことです。

祭祀承継でもめないためにできること

法律では、墳墓の所有権について、もし、被相続人が生前に指定していれば、その指定されていた人が祭祀承継者となります。

そして、指定がなければ、慣習に従って先祖の祭祀を主宰すべき者が承継すると決められています(民法897条1項)。

さらに、この慣習が明らかでないときは、家庭裁判所が祭祀承継者を定めることになります(同2項)。

具体的には、以下のようなことを総合的に考慮します。

・承継候補者と被相続人との間の身分関係
・事実上の生活関係
・承継候補者と祭具等の間の場所的関係
・祭具等の取得の目的や管理等の経緯
・承継候補者の祭祀主宰の意思や能力
・その他利害関係人全員の生活状況および意見
・死者に対する心情

そして、「被相続人が生存していたのであれば、おそらくこの人を祭祀承継者に指定したであろう」という人を指定するのです。(東京高裁平成18年4月19日決定抜粋)

まとめ

今回の事例では、もともと妻と亡父の両親の仲が良くなかったことに加え、夫婦として過ごした時間が短かったことなどが原因となって起こっています。

遺骨やお墓で親族がもめるなんて、どこかの由緒正しいお家柄の人たちだけだと思われがちですが、意外と身近な問題なのです。

大切な人が亡くなった後、もめる原因になるのは決してお金だけではありません。むしろ、お金では解決できなことの方が多いかもしれません。

亡くなった人が本当に望んでいたことは何なのか、残された人たちに責任を負わせることは、酷でもあります。

このような争いを避けるためにも、元気なうちに遺言書という形で意思表示の準備をしておきましょう。

遺言書作成に関するお問い合わせは以下のフォームより