遺産分割の意外な落とし穴、「現金」

遺産分割の意外な落とし穴、「現金」

親が亡くなって、さあ、遺産分割の必要がでてきた、そんなときに問題になるのは、どんな相続財産があった場合でしょうか。

売れもしない林や田畑の土地でしょうか。固定資産税すら払えない、高額な不動産でしょうか。それとも、評価が難しい証券や金融商品でしょうか。

確かに、そういった分割財産がある場合、遺産分割が複雑になります。

しかし、意外と落とし穴なのが、「現金」です。

今日のコラムでは、そんな事例を2つご紹介したいと思います。 “遺産分割の意外な落とし穴、「現金」” の続きを読む

妻と先妻の子との自宅をめぐる争い

妻と先妻の子との自宅をめぐる争い

今回ご紹介するのは、相続人が先妻の子どもと現在の妻の場合によく起こる問題の一つで、遺産が自宅不動産と多少の金融資産のケースです。このようなケースにおける重要な3つのトピックを踏まえつつご紹介したいと思います。 “妻と先妻の子との自宅をめぐる争い” の続きを読む

ADR啓発活動のご報告

平成31年1月~3月のADR啓発活動をご報告いたします。

たくさんの方々にADRをお話しする機会をいただき、また、当法人ADRパンフレット設置の件でもお世話になり、ご協力くださったみなさまに御礼申し上げます。

今後とも、ADRという仲裁制度をみなさんに知っていただく活動を地道に続けてまいる所存ですので、どうぞよろしくお願い致します。

活動報告はこちら

遺言・相続 Q&A

 

遺言

Q たいした財産がない場合、遺言は不要ですか
Q 仲のいい家族の場合は遺言は不要ですか
Q 自筆証書遺言と公正証書遺言はどちらがいいですか
Q 公正証書遺言を作成したいのですが、体が不自由です。方法はありますか
Q 相続させたくない相続人がいる場合はどうすればいいですか
Q 推定相続人ではない人に相続させることはできますか
Q 遺言の内容を変更したり、撤回する場合はどうすればいいのですか
Q 遺言執行者とは何をする人ですか。必ず選任しなければなりませんか
Q 遺留分とは何ですか
Q 付言事項とは何ですか
Q 検認とは何ですか

相続

Q 父の死後、遺言書が見つかりました。すぐ開封してもいいですか
Q 遺産分割協議に期限はありますか
Q 故人に負債があるかどうかはどうやって調べるのですか   
Q 相続人の間で遺産分割協議が整わない場合はどうするのですか
Q 相続人は娘である私と母です。母にすべて相続させたい場合、私が相続放棄をすればいいですか
Q 故人の生前、身の回りの世話を一手に引き受けていました。多めに遺産をもらうことはできますか?
Q 姉は故人の生前、自宅購入費を援助してもらっています。その分を相続から引くことはできますか


Q  たいした財産がない場合、遺言は不要ですか

A ご自身が「たいしたことない」と思っている財産でも、相続人にとっては違うということがあります。相続人の間で遺産分割協議が整わず、家庭裁判所で調停を行っている人の中には、遺産が1000万円以下の人たちがたくさんいます。遺産の多少にかかわらず、遺言は作成しておいた方がいいでしょう。

Q 仲のいい家族の場合は遺言は不要ですか

A 遺言の要否に家族が仲が良いかどうかはあまり関係がありません。紛争が見込まれる場合、作成が必要なことは言うまでもありませんが、仲がいいからといって作成しなくてもよいとはかぎりません。

家族がうまくいっているのは、家長である遺言者が存命していたからかもしれません。また、遺産分割をきっかけに関係がギクシャクすることもあります。また、遺産分割協議そのものが残された家族には負担です。

大切な家族が亡くなった悲しみに打ちひしがれているときに財産調査や分割協議をしなくて済むよう、あらかじめ遺言書を作成しておくのが家族への愛情とも言えます。

Q 自筆証書遺言と公正証書遺言はどちらがいいですか

A 自筆証書遺言は、手間やお金をかけずに作成できるメリットがあり、気軽に書き換えることも可能です。一方、相続が開始した際、家庭裁判所で「検認」という手続きを経なければ、執行することができません。また、「本当に本人が書いたかどうか」が争点となり、親族がもめる原因にもなります。

この点、公正証書遺言は、作成に一定の手間やお金がかかり、気軽に書き換えというわけにはいきません。しかし、公証人が作成しており、一番安全で確実です。紛失や偽造の心配もありません。

当事務所では、遺言内容の実現という点から、公正証書遺言をお勧めしております。しかし、それぞれのニーズに合わせて選択することが一番重要です。

Q 公正証書遺言を作成したいのですが、体が不自由です。方法はありますか?

A 通常、公証役場に出向いて公正証書遺言を作成しますが、ご高齢で外出が困難な方やお体が不自由な方のために公証人が出張してくれるサービスがあります。最寄りの公証役場に相談してみてください。

Q 相続させたくない相続人がいる場合はどうすればいいですか

A 民法には「相続人の廃除」という規定があり、推定相続人から相続権を奪うことができます。しかし、これは家庭裁判所に申し立てる必要があり、手続きが煩雑です。そのため、遺言の中で、相続させたくない推定相続人には遺産を残さない旨のを記載することができます。
ただ、その推定相続人が遺留分を有するときは、この限りではありません。

Q 推定相続人ではない人に相続させることはできますか

A 例えば、法定相続人である子どもではなく、内縁の妻に財産を残したいとします。その場合、内縁の妻は法定相続人ではありませんので、厳密に言うと、相続させることはできません。しかし、「遺贈」という方法で財産を残すことはできます。ただ、この場合子どもは遺留分を有しますので、遺留分減殺請求を行われる可能性があります。

Q 遺言の内容を変更したり、撤回する場合はどうすればいいのですか

A 自筆証書遺言の場合、変更したい部分に加筆修正及び署名押印すれば変更できます。また、遺言書を破棄してしまえば、撤回と同じ効力が生じます。

公正証書遺言の場合、内容を変更することはできず、新たな遺言を作成しなおすことになります。遺言の形式は問われませんんが、無効となるリスクを考えると、公正証書遺言の形式が望ましいでしょう。

遺言は、どのような形式であれ、最新のものが有効となります。ですので、新しい遺言を作成した場合、その遺言が有効であれば、以前の遺言は自然と無効になります。

Q 遺言執行者とは何をする人ですか。必ず選任しなければなりませんか

A 遺言執行者とは、遺言の内容を正確に実現させるために必要な手続きなどを行う人の事です。遺言執行者は、子供の認知や相続廃除を行う場合を除き、必ず必要なわけではありません。しかし、財産内容が複雑な場合は、諸手続が負担になる場合がありますので、弁護士、司法書士、行政書士といった専門家に依頼する方法もあります。

また、相続人のうちの一人を執行者に選任した場合、他の共同相続人と紛争関係が生じることがあります。遺言の内容が特定の相続人に偏るような場合は、親族以外の専門家を執行者として選任しておくほうがいいでしょう。

Q 遺留分とは何ですか?

A 遺留分とは、遺言の内容に優先して、相続人が遺産から取得できる財産を言います。遺留分が認められている趣旨は、残された家族の生活保障などにあります。例えば、亡くなった父親が財産の全てを愛人に相続させるという内容の公正証書遺言を作成していたとします。残された妻や子どもたち、特に老齢であることが予想される妻の生活を考えるとあまりに酷な相続となってしまいます。このような事態をさけるために認められているのが遺留分です。

遺留分を有する相続人や遺留分の割合についてはこちらをご覧ください。

Q 付言とは何ですか?

A 遺言書の最後に書く家族へのメッセージのようなものです。大抵は、遺言の内容についての説明やこれまでの感謝の気持ちを書いたりします。

付言事項に法的効果はありません。しかし、だれかの遺留分を侵害するような遺言内容の場合、説明や理由を書くことで、遺留分減殺請求を控えてもらうことができるかもしれません。例えば、長女花子と長男太郎が相続人であるところ、全財産を長女花子に相続させるという遺言を作成したとします。付言事項を以下のように書けば、長男の気持ちは少しおさまるのではないでしょうか。

「太郎には何も残してやれず申し訳ない。しかし、花子は、配偶者に恵まれず、これからの人生を一人で歩んでいなければならない。父親としては心配でならない。一方太郎は、暖かい家族と安定した仕事を手に入れた。もう何も心配していない。この気持ちをくんでくれると嬉しい。何より、私の死後、きょうだい仲良く助け合ってくれるのが一番の望みだ。」

Q 検認とは何ですか

A 検認は、相続人に対し遺言の存在やその内容を知らせるとともに、言書の形状、加除訂正の状態、日付、署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。

検認は、家庭裁判所に申し立てる必要があり、手間や時間がかかります。また、家庭裁判所からすべての相続人に通知されますので、紛争を生むかもしれません。そのため、当事務所では、検認の不要な公正証書遺言の作成をお勧めしております。

Q 父の死後、遺言書が見つかりました。すぐ開封してもいいですか?

A 開封してはいけません。家庭裁判所にて検認の手続を受けましょう。この検認手続きを経ずに勝手に遺言書を開封すると、法律によって5万円以下の罰金が課されることもあります。

Q 遺産分割協議に期限はありますか

A 明確な期限はありません。しかし、分割協議をしないまま放置し、次の相続が開始した場合、相続関係が大変複雑になってしまい、子どもの代に負担をかけることなります。また、相続税の支払いが必要な場合は、相続開始から10か月と定められていますので、自ずと遺産分割協議の期限も10か月となります。

また、相続を放棄する場合は3か月以内、相続財産の所得税の申告は4か月以内などの期限もあります。

大切な人がお亡くなりになり、法要をなんとか無事に終えた後、相続のことまで考えられないという気持ちになりがちです。遺産の内容や相続人の範囲が広いなど、手続が煩雑になることが予想される場合は、弁護士・司法書士・行政書士等の専門家に依頼するのも一手です。

Q 相続人は娘である私と母です。母にすべて相続させたい場合、私が相続放棄をすればいいですか

A よくある相続パターンですが、この場合、娘さんが相続放棄をしてしまうと、相続開始時に遡って相続権を有しないことになります。もし、故人にきょうだいがいた場合、娘さんが相続放棄すると、故人のきょうだいに相続権がうつることになり、お母さん一人での相続が難しくなります。お母さんがすべて相続する内容の遺産分割協議書を作成しましょう。

Q 故人に負債があるかどうかはどうやって調べるのですか

A 人に借金がある場合、遺産および負債の全体を把握したうえで、相続人として債務整理するか、相続放棄するかを選択することになります。ただ、負債について、家族に詳しく説明していなかったり、隠したりしていることもままあります。そのような場合は、以下の方法で負債の調査を行うことになります。

①保管書類、郵便物の確認
②通帳の記帳内容を確認
③個人信用情報開示請求

Q 相続人間で遺産分割協議が整わない場合はどうするのですか

A 家庭裁判所にて調停を行う方法があります。ただ、調停も協議の場であることには変わりませんので、それでも合意ができない場合は、審判という手続きに移行することになります。いずれにしても、家庭裁判所で遺産分割に関する話合いをすると長期化が懸念されます。なるべくなら、調停に申し立てる前に解決したいものです。

Q 故人の生前、身の回りの世話を一手に引き受けていました。多めに遺産をもらうことはできますか?

A 寄与分といって、故人を特別にお世話した人がより多く相続できる制度があります。ただし、寄与分は、少しお世話しただけで誰にでも認められるものではありません。

①相続人であること(隣人などはだめ)
②特別な行為であること(妻が夫の介護をした程度ではだめ)
③故人の財産の維持又は増加と因果関係があること(介護ヘルパー代がかからなかったなど)

ほかにも、無償性や継続性、専従性なでの要件も必要になってきます。

Q 姉は故人の生前、自宅購入費を援助してもらっています。その分を相続から引くことはできますか

A この場合、お姉さんは「特別受遺者」となり、お姉さんが援助してもらった金額を相続財産に含めた金額で分与をし直すことになります。

特別受益の制度は、生前贈与や遺贈により遺産の前渡しをした被相続人の意思を尊重しつつ、生前贈与や遺贈の「持ち戻し」をすることにより、法定相続分に修正を加え、もって共同相続人の実質的衡平を図ろうとするものです。

遺言書の基礎知識

3種類の遺言方式

公正証書遺言

公証役場で作成する遺言書です。公証人によって作成されますので、もっとも安全で確実な方法です。 原本が公証役場に保管されるので、紛失・棄損した際に写しの再発行を受けることが可能です。また、検認手続きが不要で相続手続きがスムーズに進むこともメリットです。
遺言書に記載する財産の金額によっては、手数料が数万円~かかります。気軽に書き直しがしたいという方には不向きです。しかしながら、遺言が確実に実行される可能性がもっとも高いという点で、一番おすすめです。

自筆証書遺言

全文を手書きする遺言書です。誰かに代筆してもらったり、パソコンで作成したものは無効になります。 ご自身で作成でき、費用もかからない点がメリットです。しかし、ご本人が書いたという証明ができないため、意思の有効・無効をめぐってトラブルになるおそれがあります。また、自筆証書遺言は、形式が厳格に決められていますが、不十分な点が一点でもあると、遺言書全体が無効になるという危険性があります。さらには、遺言書の検認を受けなければいけない点も残されたご家族に大きな負担となるおそれがあります。

秘密証書遺言

公正役場で遺言書を作成しますが、公証人は関与しません。遺言書の内容を秘密にできるというメリットはありますが、検認を経る必要もあり、実際はほとんど機能していない方式です。当事務所でも取り扱っておりません。

遺言書を作成するメリット

将来のもめごとを防げる

なんといっても一番のメリットは、ご自身の死後、親族の紛争を防げるという点にあります。「うちはみんな仲がいいから大丈夫」とおっしゃる方もおられますが、一家の長が存命しているからこそ、ご家族がまとまっているのかもしれません。それでなくても、一家の長が亡くなった際は、いろいろなことを決めていかなければならない疲労感や大切な人を失ったストレスに疲弊するものです。相続手続を円滑に進めるためには、遺言書は必要不可欠です。

自分の意思を反映させられる

財産は、ご自身が生きてきた証であり、かけがえのないものです。その財産を残された家族にどのように分配したいか、きっとご希望があるはずです。そのご希望を確かに叶えるのが遺言書です。ただ、このメリットを確実に享受できるのは公正証書遺言のみです。みなさんが公正証書遺言を選択されるのも、この理由によるのだと思います。

遺言書を作成する時期

遺言書は15歳以上であればだれでも作成することができます。とは言うものの、20代、30代で遺言書を作成する方は少ないでしょう。一番多いのは、定年退職でお仕事を辞められた後、ゆっくりと今後のことを考えられ、60代、70代で作成されるというパターンではないでしょうか。

遺言書を作成するのに「適した時期」はありません。ご自身が作成したくなったときが作成時期です。しかし、思わぬときに病気になったり、気付いたら遺言書作成が億劫になってしまっているということがあります。少しでも遺言書を作成したいというお気持ちがある場合は、早めの作成をおすすめいたします。

「終活」という言葉の流行もあり、また、高齢者人口の増加もあり、公証役場で作成される遺言書の数は増加傾向にあります。後に残されるご家族のためにも、是非遺言書を作成いただきたいと思います。

遺留分

遺留分とは

遺留分とは、遺言の内容に優先して、相続人が遺産から取得できる財産を言います。遺留分が認められている趣旨は、残された家族の生活保障などにあります。例えば、亡くなった父親が財産の全てを愛人に相続させるという内容の公正証書遺言を作成していたとします。残された妻や子どもたち、特に老齢であることが予想される妻の生活を考えるとあまりに酷な相続となってしまいます。このような事態をさけるために認められているのが遺留分です。

遺留分が認められている相続人

遺留分が認められている相続人は以下のとおりです。
①配偶者
②直系卑属(子や孫)
③直系尊属(親や祖父母)

兄弟姉妹や甥・姪に遺留分はありません。

遺留分の割合

① 相続人が直系尊属のみの場合は、法定相続分の3分の1です。
② ①以外の組み合わせの場合は、法定相続分の2分の1です。

夫が死亡し、妻と子2人がいる場合(相続財産1,000万円)

  法定相続分 遺留分
配偶者 1/2(500万円) 1/4(250万円)
子(1人あたり) 4/1(250万円) 8/1(125万円)

遺留分減殺請求とその対策

当然には無効にならない遺言

遺留分を侵害する遺言書を書いたとしても、当然にその遺言書が無効になるわけではありません。遺留分を侵害された相続人が遺留分減殺を請求してはじめて、遺留分が主張されることになります。

対策としての付言事項

付言事項は、相続人へのメッセージのようなものです。それ自体に法的効力は何もありませんが、なぜそのような遺言の内容となったのか、遺言者として、どのように考えたか、などを記載するのが一般的です。

例えば、次男にすべての財産を残す遺言の内容にしたいのであれば、長男は既に社会的地位を有していて、生活が安定していること、一方次男は、辞職して遺言者の看護にあたった結果、将来に不安を抱えていること等、遺言者が次男に全財産を残すに至った経緯を記載します。

遺留分対策として、死亡保険金の受取人にするなどの工夫も考えられますが、遺言者の一番の願いは、残された家族が仲良く過ごしてくれることだと思います。付言事項は、法的拘束力はなくとも、家族の理解を得るためにも、是非書いておいた方がいいと思われます。

 

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自筆証書遺言の書き方

自筆公正証書の書き方

 


事前準備

財産の把握

遺す財産を把握し、財産目録を作成しておきましょう。同居のご家族であっても、自分以外の誰かの財産を完全に把握しておくのは難しいものです。また、ご親族が「〇〇銀行と取引があったはず」、「〇〇のあたりに不動産があったと思うけど」という程度に把握していたとしても、ご本人亡き後にご親族が調査するのは大変困難です。

また、すべての財産が明らかになっていない場合、「財産をすべて知っている人」と「知らない財産がある人」がいることになり、相続人の間で「まだ隠し財産があるのでは」と疑心暗鬼になったり、相続人間紛争に発展したりします。

そのため、まずは、ご自身がお持ちの財産を「財産目録」という一目見れば財産内容が分かる形で残しておきましょう。

相続人の把握

 

ご自身にお子さんがおられる場合、相続人の範囲はそれほどひろがることはありませ。しかし、お子さんがおられない場合、ごきょうだいやその子ども(姪や甥)にまで相続が及ぶことがあります。できれば、親族関係図などを作成すると視覚的にも分かりやすいでしょう。

作成上の注意

形式的な注意

自筆証書遺言は、備えていなければならない形式が民法第968条で次のように定められています。

「自筆証書によって遺言をするには、遺言者がその全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない」

つまり、

①全文を自分で書くこと(パソコンや代筆は無効)
②日付を入れなければならない
③署名、押印が必要

ということです。この他にも、一つの遺言書で2人以上の遺言の内容が書かれているものも無効ですし、遺言者が遺言内容を語っている録音テープや録画ビデオでもダメです。せっかく書いた遺言が無効にならないよう、しっかりと約束事を把握してから作成しましょう。ちなみに、日付については、何年何月何日と確定することが必要です。「〇〇年6月吉日」のような書き方では無効となります。

内容的な注意

遺留分を侵害していないか

遺言は、自分の思い通りに書くことができますが、ご自身の死後、親族間に紛争が起こらないような配慮も必要です。例えば、前妻と死別し、内縁の妻と長男がいるとします。遺言により、内縁の妻にすべての財産を遺贈するという内容の遺言を遺したとしましょう。おもしろくない長男は、遺留分減殺を請求するかもしれません。なるべくなら、遺留分を侵害しないような遺言の内容を心掛け、どうしてもという場合は、付言にて説明をするようにしましょう。

遺言執行者は記載するか

遺言執行者とは、遺言の内容を正確に実現させるために必要な手続きなどを行う人のことです。子供の認知や相続廃除を遺言で行う場合は、遺言執行者が必ず必要ですが、それ以外の場合は任意です。

しかし、遺言執行の手続は財産の内容によっては複雑多岐にわたり、専門家に依頼した方が安心できる場合があります。また、相続人のうちの一人を執行者として選任する場合、親族間紛争を招くおそれもあり、慎重な判断が必要になってきます。 

付言事項は気持ちが伝わるように書けているか

遺留分を侵害するような遺言を遺す場合をはじめ、相続人の間で誰かに偏るような内容となっている場合は、なぜそのような分け方を希望するのか、理由を書いておくことによっていらぬ紛争を回避できることがあります。付言事項には法的効果はありませんが、「最後のラブレター」とも呼ばれる大事な部分です。

遺言書の例

タイトル 

遺  言  書


誰の遺言か
 
遺言者✖✖は、この遺言書によって、妻〇〇、長女△△、長男□□に対して次の通りに遺言する。


分け方 
  
1. 妻〇〇に下記の不動産を相続させる。
(1)土地
所在 東京都港区●-●●-●●
地番 
地目 
地積 
 
 (2)建物
所在 東京都港区
家屋番号
種類 
構造 
床面積  
 
 2. 長女△△に下記の預金を相続させる
●●銀行●●支店 口座番号●●●●●●●

3. 長男□□には残りの財産すべてを相続させる
  


遺言執行者 (任意)

遺言者✖✖は、遺言書の執行者として下記の者を指定する

   住 所 東京都港区~
   職 業 行政書士(成人していれば誰でも選任可能)
   遺言執行者  ●●●●


付言事項

母さん、△△、□□、今まで支えてくれてどうもありがとう。一家の長として、ここまでやってこれたのもみんなのおかげだと思っています。

母さんには、引き続き今の家に住みながら、老後をゆっくりと過ごしてほしいと思います。△△、自分の家族の世話との両立は大変だと思うけれど、母さんのめんどうをよろしく頼みます。

□□、大したものを遺してやれなくてすまない。しかし、□□は大企業に勤めていて将来有望だ。自分の手で自分の道を切り開いていくことを信じている。がんばってほしい。


日時等

平成◯◯年◯◯月◯◯日
 
住 所  東京都新宿区西新宿●-●●-●
 
遺言者  ✖✖   印

 

相続の流れ

相続の流れ

相続開始

被相続人の死亡により相続が開始します。ご存知でない方も多いと思いますが、相続税の支払いは、相続が開始してから10か月と決められています。相続税が発生しない場合はいいのですが、発生するかどうかも含め、対象財産を確定しないことには分からないのです。また、相続放棄にも3か月という期限があります。また、遺言があるかどうかの確認も必要です。自筆遺言書がある場合は、家庭裁判所で検認の手続をとります。公正証書遺言の場合は、その内容にそって相続を進めます。

 

相続人の確定

相続人の確定は、被相続人の戸籍を現在から出生時にまで遡ってすべて取得するところから始まります。そのすべての戸籍の中に出てきた相続人の地位を有する親族が全員同意しなければ、遺産分割協議はできません。

配偶者や子どもが存命している場合、相続人の範囲は比較的限定的で、相続人の確定は比較的簡単です。しかし、一生独身であった叔父や叔母が亡くなった場合などは、会ったこともない遠縁の親族が共同相続人になっていたり、所在が分からない親族がいたりします。また、まれに、被相続人が認知していた子どもが名乗り出てくるなど、思いもよらないことが発生します。

 

遺産の確定・財産目録の作成

次に被相続人の財産を確定します。財産というと、土地や建物といった不動産と預貯金のみを思い浮かべる方もおられるかもしれません。しかし、実際には、株式証券、保険、国債、地上権やゴルフ場などの会員権類、自動車など複雑多岐にわたります。ご自身で会社を経営されていたりすると、さらに難しくなります。

また、忘れてはいけないのが負の財産、つまりは負債の調査です。相続はプラスの財産のみではなく、負の財産も一緒に相続するのが通常です(限定承認の場合は別ですが)。ですので、相続したものの、負債の方が多くて大変な目にあった、ということがないよう、負債についての調査も必要です。

 

放棄、限定承認の決定

財産の内容が確定したところで、そもそも相続するかどうかを確定します。完全に放棄する場合は、裁判所で行う必要があり、その効果として最初から相続人でなかった扱いになります。限定承認は、財産がプラスの範囲で相続しますという意思表示です。これは、共同相続人全員で行う必要があります

遺産分割協議開始

相続人と相続財産が出揃ったところで、遺産分割協議を開始します。それぞれの思惑や生活レベルの違い、被相続人との関係性の濃淡等、すんなりと協議できるとは限りません。その場合は、家庭裁判所での遺産分割調停(裁判所で相続人同士が協議)、それでもだめなら審判(裁判所の裁判官が決める)手続きに進むことになります。