親の死後、遺体を放置したとして、同居する40代~60代の無職の子どもが死体遺棄の疑いで逮捕される事件が複数あります。
「親の年金がなくなってしまったら、どうやって生きていけばいいのか・・・」
事件の背景には、そんな当事者の焦燥感や絶望があります。
支援者によりますと、対人恐怖や精神疾患などを抱えて、親の死やその後の生活について誰にも相談することができず、結果的に遺体を放置してしまう当事者も少なくないとのことです。
しかし、ここまで極端ではなくても、親族の死に直面すると、多かれ少なかれ慌てふためいてしまい、何も手につかないということはままあることです。
どんなに心の準備をしていても、いざその場面が来れば、平常心では対応ができないものなのです。
そのため、今日は、親御さんや近しいお身内が亡くなった際にやらなければならないことをざっと予習しておきましょう。
お葬式の準備
死亡届と火葬許可
まず、亡くなった場所が自宅か病院なのかによって、手続きが異なってきます。
病院で亡くなった場合、特別な手続きを経ることなく、医師が死亡診断書を書いて渡してくれますので、それを添付して、死亡から7日以内に死亡届を役所に届け出ます。その手続きの後、火葬許可が出ます。
一方、自宅で亡くなった場合、死亡原因を確認するため、ときに警察が介入することもあります。
そうなると、死亡原因特定のために解剖に回されるなど、親族にとっては心労が重なる結果となってしまいます。
葬儀会場の手配
そして、次にしなければならないのが、葬儀会場の手配です。
葬儀屋さんによって、費用も違えば、サービスの内容も違ってきます。最近は、故人の趣味を反映した特別な葬儀や、お花をふんだんに使った葬儀、音楽にこだわった葬儀など、特徴的な葬儀内容を売りにしている葬儀会社もあります。
いざとなったとき、「高いばかりで暖かみのない葬儀だった」と後悔しないよう、日ごろから少しアンテナを張っておきたいところです。
親戚・知人への連絡
そして、意外と大変なのが、親戚・知人への連絡です。
葬儀会社がはがきなどを手配してくれますが、連絡先のリストは親族が提供しなければなりません。また、一部の近しい親戚や知人には、親族で手分けして電話で連絡することになります。
また、地方では、地元の新聞社から、入れ代わり立ち代わり訃報記事の掲載について喪主に照会が入ったりもします。
こういった大変さを少しでも省略するため、最近は「家族葬」が増えているそうです。「家族葬」は、たくさんの人を呼ぶのではなく、身近な人たちだけで執り行います。また、「直葬」として、ごく簡素な葬儀で済ませる家族も増加傾向にあるようです。
資格喪失手続き
これがまた面倒なのですが、役所にて、健康保険や年金の資格喪失手続きを行う必要があります。
この手続きを怠ると、「不正受給」になってしまう危険性がありますので、注意が必要です。
また、故人の銀行口座を凍結しなければなりません。そのため、まずは、とりあえず電話で、正式には除籍謄本などを添えて書面で死亡の連絡を行います。
これによって、相続手続きによらないと払い出しができなくなります(2019年7月1日からは、葬儀費用が必要な場合には、遺産分割の手続きがなくとも、法定相続分の範囲で1金融機関当たり150万円までの支払いが認められるようになります。)。
故人の自宅の整理
通夜、告別式、初七日法要、納骨、香典返しなどを済ませるとともに、同居していない親などの場合には、家の中の状態を確認する必要があります。
財産の整理
預貯金通帳や印鑑はどこか、証券会社からの手紙は置いていないか、保険の証書は存在するかなど、相続対象になる財産を探す必要があります。
また、マイナスの財産がないかの確認も必要なので、役所やカード会社から督促状が送られていないか、消費者金融でお金を借りていた形跡はないかなども確認しましょう。
そして、何より大切なのが、遺言書の有無です。もし、故人がこれまでの人生の思いを託した遺言書があるのならば、是非、最後の声として相続人全員に届けたいものです。ただ、遺言書を見つけたとしても、すぐに開封してしまわず、家庭裁判所で検認という手続きを経なくてはいけません。
形見分け
資産価値はなかったとしても、身内や知人にとっては、かけがえのないものや思い出の品だったりする遺品があります。
そういったものは、必要な人にもらってもらうのが、故人の供養にもなり、遺品の有効活用にもなります。
自宅の処分の準備
家の主がいなくなってしまうと、どこに何があるのか、皆目分からないという状況がよくあります。特に、故人が高齢で身の回りのことができなくなっていたり、認知症が進んでいたりすると、自宅内は荒れ放題で、整理整頓に多大な労力と時間を要することなってしまいます。
故人が一人住まいの場合、持ち家だったとしても、賃貸だったとしても、その自宅を何らかの形で売ったり買ったりすることになります。そういうことができる状態にまでもっていくのが一苦労なのです。
相続手続き
そして、ここからが相続手続きです。
まずは、故人の財産と相続人を特定します。
その上で、資産が債務を上回っていれば、単純承認し(手続き不要)、債務が資産よりも多い場合には、相続放棄も検討しなければいけません。
また、疑わしい場合には、資産の限度で債務を承継する限定承認を相続人全員で行うという方法もあります。
また、預貯金や株式などの金融資産や土地建物などの不動産を基準に従って評価し、資産額が相続税申告の基礎控除額を上回る場合には、申告の準備もしなければなりません。
そして、生前の収入があれば、その年度の死亡日前日までの所得税申告も必要です。そのほか、遺産ではないけれど、生命保険や入院保険の請求手続きもあります。
加えて、相続人同士の遺産分割協議やそれに基づく名義変更手続きなど、やることはあまりに多いのです。
まとめ
親御さんが亡くなるというのは、大変悲しいことですが、必ずやってくる試練でもあります。
いつかは来てしまうそんな日のために、日ごろから意思疎通をはかり、どこに何があるのか、財産はどんなものがあるのか、それをどう分けてほしいのか、お葬式はどこでどんな風にやってほしいのか、そんなことを話し合っておいてほしいのです。
ただ、なかなか、親御さんの前で面と向かって「死後のため」の話をしにくかったりします。
また、相続においては、兄弟姉妹が利害関係者になるので、なかなか話が進められなかったりします。
そのため、そんなときは、「家族会議サポート」として、ADRによる仲介をご利用いただければと思います。法的な面と税務面の双方から専門家がアドバイスいたします。
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